倒産企業の約半数は「黒字」!?会社を生存させる「財務」と「銀行評価」の真実
「決算書は税理士に任せているから問題ない」 「利益が出ているから、うちは安泰だ」
もし経営者であるあなたがそう考えているなら、会社の未来に黄色信号が灯っているかもしれません。
中小企業の経営現場において、「会計」や「財務」はしばしば軽視されがちです。しかし、企業の生存率データや銀行の融資判断基準を紐解くと、そこには「どんぶり勘定」では決して乗り越えられない厳しい現実があります。
今回は、表面上の数字に惑わされず、会社を10年、20年と存続させるために不可欠な「財務の原理原則」について、より詳しく解説します。
「黒字倒産」の衝撃的な実態

「倒産」と聞くと、赤字垂れ流しの企業を想像する方が多いでしょう。しかし、東京商工リサーチの調査によると、倒産企業の構成比において、実に「47.73%」が直前の決算で黒字であったことが示されています。約半数の会社は、利益が出ていたにもかかわらず潰れているのです。
なぜ、儲かっているのに会社が潰れるのでしょうか。 その最大の原因は「資金ショート」です。
そもそも「倒産」とは法律用語ではなく、「債務(借金や買掛金)が弁済できなくなった状態」を指します。つまり、いくら決算書(損益計算書)上で利益が出ていても、手元に支払うための「現金」がなければ、その時点で会社は終わりです。
多くの中小企業経営者が陥る罠は、「利益」と「キャッシュ(現金)」を混同してしまう点にあります。会社を守るためには、「利益の最大化」以上に「キャッシュの最大化」を最優先事項として捉える必要があります。
「税務」と「財務」は似て非なるもの

多くの社長が「税理士と顧問契約をしているから財務も安心」と誤解しています。しかし、ここで明確に区別しなければならないのは、「税務(Tax)」と「財務(Finance)」の目的の違いです。
税務の目的: 過去の取引結果(収益・費用)に基づき、税法に則って正しい税金を計算・申告すること。視点は常に「過去」にあります。
財務の目的: 会社を存続させるために、未来の資金をどう調達し、どう運用するかを管理すること。視点は「未来」にあります。
税理士の先生は「税務申告」のプロですが、必ずしも「銀行融資」や「未来の資金繰り」のプロではありません。銀行が融資審査を行う際、税務署用の決算書をそのまま評価するわけではないのです。
銀行は決算書の「厚化粧」を見抜く

銀行が融資を行う際、彼らには明確な「格付け」のルールがあります。 銀行員は、提出された決算書をそのまま鵜呑みにはしません。税務上認められている処理であっても、銀行の査定では認められない項目があるからです。
銀行が見ているのは「実態バランスシート(実態B/S)」です。 例えば、決算書上の資産に計上されている「回収見込みのない売掛金」や「価値のない在庫」、あるいは過大な「役員貸付金」などは、銀行の評価では資産とみなされず、マイナス評価されます。これを剥がしていくと、帳簿上は資産超過でも、実態は「債務超過」であるケースが少なくありません。
銀行は「返済能力」を見ています。 「貸したお金が返ってくる会社か?」 「経営者は数字を理解し、返済計画(未来)を語れるか?」 この基準をクリアしなければ、ある日突然「これ以上の融資はできません」と宣告され、資金ショート=倒産へのカウントダウンが始まってしまいます。
財務支援の3つの柱と生存率の壁

会社を潰さないためには、以下の3つの財務支援領域に取り組む必要があります。
① 資金繰り管理: 「日繰り」「月繰り」で現金の動きを可視化し、数ヶ月先の資金ショートを未然に防ぐ。
②予算管理(予実管理): 「経営計画書」を作成し、目標利益を逆算で設定する。どんぶり勘定から脱却し、計画的な経営(PDCA)を行う。
③資金調達(銀行対策): 銀行の格付けルールを理解し、融資を受けやすい決算書作りや交渉を行う。「良い融資(財務内容に合った融資)」と「悪い融資(銀行都合の融資)」を見極める。
これらを行わずに経営を続けることは、極めてリスクが高いと言わざるを得ません。 データによると、企業の存続率は設立5年で約14.8%、10年で約6.3%、20年経つとなんと「0.4%」にまで低下します。1000社あったら、20年後に残っているのはわずか4社という厳しい世界です。
生き残る6.3%に入る企業と、消えゆく94%の企業。その分かれ目は、経営者が「数字(会計・財務)」を共通言語として使いこなし、原理原則に基づいた経営ができているかどうかにかかっています。
すぐ始めるべき「経営の健康診断」

人間が定期的に健康診断を受けるように、会社も「財務診断」が必要です。 「身長170cm、体重130kg」の人が健康と言えないように、会社にも「異常値」が存在します。しかし、多くの経営者は自社の正常値を知りません。
まずは、自社の決算書を「財務」の視点で見直してみてください。
現状把握:自社の実態純資産はプラスか?
問題抽出:どこでお金が消えているのか?
未来計画:5年後、会社をどうしたいのか?
京セラ創業者の稲盛和夫氏は「会計がわからんで経営ができるか」と言いました。 会社を強くし、社員と家族を守るために、今こそ「財務」という武器を手に取るときではないでしょうか。