129点満点なのに、普通の中小企業は最初から91点しか取れない|「銀行格付け」は“合格点”で攻略する

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129点満点なのに、普通の中小企業は最初から91点しか取れない|「銀行格付け」は“合格点”で攻略する

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〜定量評価は第一歩でしかない。点数の構造を知る社長だけが、必要なときに借りられる〜

決算書を銀行に提出した瞬間、あなたの会社は内部で“採点”されています。その採点表の名前は「銀行格付け」。ところが、多くの社長はこの採点表の存在も、ましてその中身も知らないまま、税理士に任せた決算書をそのまま窓口に差し出しています。

「黒字なんだから、貸してくれるだろう」――そう思っていないでしょうか。しかし昔から「勘定合って銭足らず」ということわざがあるように、帳簿上は儲かっているはずなのに、手元の現金を数えると足りない、ということが起こります。損益計算書(PL)の利益と、手元の現金(CF)は一致しないのです。これが「黒字倒産」「資金繰り倒産」の正体であり、銀行はその黒字の“中身”まで点数化して見ています。

そして、ここに多くの経営者が知らない事実があります。この採点表は129点満点ですが、普通の中小企業は、最初から91点ほどしか取れない構造になっているのです。今回は、銀行が決算書をどう採点し、何点で「正常先」になるのか、そして中小企業が現実的に狙うべき“合格点”の発想を解き明かします。

● そもそも「銀行格付け」とは何か

預貯金の金利は公開されていて、誰が預けても同じです。ところが融資は違います。「貸すか貸さないか」「金利は」「金額は」「返済期間は」「担保は」「連帯保証人は」――すべてが相手によって変わります。この判断のもとになるのが、お金を借りる法人(債務者)を査定する「格付け(債務者区分)」です。

もともとは金融庁が金融機関に義務付けていたもので、基準は金融庁の「金融検査マニュアル別冊【中小企業融資編】」に記されています。自社の資産にどれだけの価値があるかを自ら査定する「自己査定」が求められ、その結果、債務者は次のように区分されます。

債務者区分ざっくりした状態
正常先業況が良好で、財務内容にも特段の問題がない
要注意先業況が低調・不安定、または財務に問題があり管理に注意を要する
破綻懸念先経営難で、今後経営破綻に陥る可能性が大きい
実質破綻先法的破綻はないが、実質的に経営破綻している
破綻先法的・形式的に経営破綻が発生している

当然、新規融資を普通に受けられるのは「正常先」です。まずはここを死守する、という発想がスタートラインになります。

● 「正常先」になるための財務的な目安

債務者区分の言葉だけでは具体的なイメージが湧きません。あくまで目安ですが、財務的にはおおむね次のラインで判断されます。

  • 正常先:実質債務超過になっていない/繰越損失がない/営業利益が2期連続赤字でない/債務償還年数が10年以内に収まっている
  • 要注意先:繰越損失が計上されている、営業利益が2期連続赤字、または債務償還年数が10年以上20年以内
  • 破綻懸念先:2期連続で実質債務超過、実質債務超過の解消年数が5年以上、債務償還年数が20年以上、元利金が6か月以上延滞 など

ポイントは、実質債務超過と債務償還年数です。「実態として債務超過に陥っていないか」「今の借入を、稼ぐ力(返済原資)で何年あれば返せるか」――銀行はここを冷徹に見ています。

● 決算書は、こうして点数化される──一次・二次・三次評価

銀行に決算書を提出すると、次の3段階で格付けが決まります。

  1. 一次評価【定量評価】:決算書の数値を財務スコアリングモデル(採点基準)に入力して採点する。評価のウエイトの大半を占め、都銀では定量評価100%、地銀・信金でも80%ほどと言われます。しかも3期分で評価するため、たまたま今期だけ利益が出てもすぐには上がりません。
  2. 二次評価【定性評価】:経営者の資質、業界の特性、将来性など、数字に表れない部分を担当者が主観的に評価する。ただしウエイトは低い。
  3. 三次評価【実態評価】:回収できない売掛金や売れない在庫などの不良資産をチェックし、決算書を実態に合わせて調整する。調整後の貸借対照表を「実態バランス」と呼ぶ。

● 129点満点の正体──中小企業には「届かない約38点」がある

一次評価のスコアリングは、客観的評価項目13個・合計129点満点です。配点を大きく4つに分けると、こうなります。

  • 安定性 37点(自己資本比率10/ギアリング比率10/固定長期適合比率7/流動比率10)
  • 収益性 19点(売上高経常利益率7/総資本経常利益率7/収益フロー5)
  • 成長性 28点(経常利益増加率5/自己資本額15/売上高8)
  • 返済能力 45点(債務償還年数10/インタレスト・カバレッジ・レシオ15/キャッシュフロー額20)

銀行が見ている本丸は、突き詰めると①自己資本(純資産)②営業利益③経常利益の3つです。

ところが、ここに中小企業にとっての“罠”があります。高配点の項目を満点で取るには、キャッシュフロー額20点に110億円以上、売上高8点に100億円以上、自己資本額15点に100億円以上が必要なのです。中小企業には、どう逆立ちしても届きません。

結果として、規模で決まるこれらの項目で約38点を最初から失う。残りをどれだけ完璧にしても、満点はおおむね91点止まり。中小企業が現実的に狙える格付けは、上から数えて「4」あたりが上限――これが採点表の正体です。

● 満点ではなく「合格点」──賢く正常先を取る

ここが今回の核心です。129点満点は、目標ではありません。 目指すべきは「合格点」であり、「どこで点を取るか」を設計することです。

スコアと格付け・債務者区分の対応は、おおむね次のとおりです(あくまで目安で、金融機関により設定は異なります)。

スコア(129点法)格付け債務者区分
51点以上格付5(リスクあるが平均水準)以上正常先
32点以上 51点未満格付6(ややリスク高いが許容範囲)正常先
25点以上 32点未満格付7要注意先
25点未満格付8以下破綻懸念先 など

つまり、32点取れば正常先です。ただし格付6は「ややリスク高いが許容範囲」という位置づけ。できれば**格付5(最低51点)**を取りたいところです。

資格試験と同じで、全部を勉強するのではなく、試験に出るところ・自社が点を取れるところを狙う、という発想です。自社の強みはどこか。どこなら点が伸びるのか。それを見極めて合格点を積み上げます。

もう一つ重要なのが、点数には“踊り場”があること。たとえば自己資本比率は、1%でも14%でも「15%未満」で同じ低得点になりがちです。15%のラインを越えなければ、1%から14%まで頑張っても点は増えません。効かない努力と、閾値を越える効く努力を見分ける――これが格付け改善の勘どころです。

実際、あるサンプル決算書(売上6.5億円規模)を採点すると、自己資本比率0点・ギアリング比率0点という弱点を抱えながらも、固定長期適合比率5点、流動比率10点、インタレスト・カバレッジ・レシオ15点などで積み上げ、合計57点=格付5(正常先)に収まります。満点を狙わずとも、取れるところで合格点に届くのです。

● 点数の裏で銀行が見ている「実態」

ただし、点数だけ整えても安心はできません。先ほどの三次評価(実態評価)で、銀行は決算書を“実態”に引き直すからです。

同じサンプル決算書を実態で見ると、景色が一変します。立替金・短期貸付金・未収入金・仮払金、電話加入権やソフトウエア、投資有価証券・関係会社株式・長期貸付金・会員権――こうした回収・換金の見込みが薄い資産が、実態評価ではほぼゼロに引き直されます

例えばですが、簿価では純資産4,500万円の黒字だったはずが、実態では純資産▲1億600万円の実質債務超過になってしまうということも珍しくありません。点数上は正常先でも、実態では債務超過――これでは本当の信用は得られません。

とりわけ要注意なのが、資産に紛れ込む「悪の三勘定」=貸付金・未収入金・立替金です。決算書には資産として載っていても、現実には価値がない、あるいは回収できない。こうした“決算書にはあるが現実には無い”棄損資産こそ、銀行が実態調整で真っ先に消しにかかる項目です。

だからこそ「定量評価は第一歩でしかない」。点取りゲームに入る前に、実態のきれいな決算書をつくることが大前提なのです。

● 格付けは「社会的評価」──高めれば、調達は自由になる

そもそも決算書を作るのは、税理士ではなく社長の仕事です。税理士の仕事は、間違いのない正しい決算報告書を作成し、適正に納税させること。決算内容を良くして会社を良くするのは、守備範囲の外です(だから黒字・赤字について税理士に責任はありません)。本業のプロでも、財務は「面倒くさい、わからない、見ていない」という社長は少なくありません。航海技術はあっても、羅針盤が読めない状態です。

しかし、銀行格付けは会社の「社会的評価」です。これを知り、意識して高めれば、経営の基本である「調達と運用」のうち調達がしやすくなり、金利の低い調達ができ、経営の自由度が大きく広がります。正しい経営目標を持てるようになる、という効果も見逃せません。

最後に、財務基盤の強い会社が意識している経営の鉄則を確認しておきましょう。

  1. 鉄則1:資産保有の目的は、本業の利益を得るため
  2. 鉄則2:経費使用の目的は、本業の利益を得るため
  3. 鉄則3:会社のお金は、誰にも貸さない
  4. 鉄則4:銀行を味方につける(良い関係をつくる)――必要なときに、お金を借りられるように

稲盛和夫氏の名著『実学』の帯には、こんな言葉があります。「会計がわからんで経営ができるか」。銀行格付けとい社会的評価の構造を理解し、満点ではなく合格点を、そして点数の裏にある実態を整える。それができる社長だけが、雨の日にも傘を差し出してもらえる――いざというときに、必要なお金を借りられる会社になるのです。

著者情報

楢﨑 賢也

楢﨑 賢也

父の事業が債務超過に陥り、経営者と家族の人生を左右する現実を目の当たりにする。
この原体験を起点に、約10年間、法人・経営者向けの財務支援に従事。
数多くの決算書と金融機関対応に向き合う中で、節税や商品提案だけでは会社は守れないことを痛感する。
銀行格付を軸に、決算書構造の改善から資金調達戦略まで一貫して設計し、銀行に評価され、選択肢を持ち続けられる会社づくりを支援する。

◼︎ 財務コンサルタント
◼︎ 2級ファイナンシャル・プランニング技能士

楢﨑 賢也